知られざる反例(補足)

昨日の記事 L^p, L^q (1\le p < q < \infty )に包含関係がないことを説明したが,説明がやや適当であったので,ほんの少しだけ気持ち些細な補足をちょこっとしよう.

 f(x) = \begin{cases} k & \left( k \le x < k + \frac{1}{k^{q+1}} , k \in \mathbb{N} \right) \\ 0 & \mathrm{else} \end{cases}

としよう. f(x)はグラフにすると次のようになる:

f:id:End01nojo:20141215180705p:plain

 f(x) L^\alphaであるかどうかを調べるには,

 \int_{-\infty}^\infty |f(x)|^\alpha dx

が有限の値になってくれればよい. \alpha=1の時はグラフでいうと短冊の面積の総和になるが,任意の \alphaで考える場合には, k個目の短冊は縦 k^\alpha,横 1/k^{q+1}の長方形となる.よって k個目の短冊の面積は

 {\displaystyle k^\alpha \times \frac{1}{k^{q+1}} = \frac{1}{k^{q+1-\alpha}} }

となる.よって

 {\displaystyle \int_{-\infty}^\infty |f(x)|^\alpha dx = \sum_{k=1}^\infty \frac{1}{k^{q+1-\alpha}} }

である.この級数が収束するには q+1-\alpha>1でなくてはならない.ここで, p < qであったから q+1-p>1であり, f(x) \in L^pであることがわかる.また q+1-q=1となってしまうので f(x) \notin L^qとなる.

次は

 g(x) = \begin{cases} k^{-\frac{1}{p}} & ( k \le x < k+1, k \in \mathbb{N} ) \\ 0 & \mathrm{else} \end{cases}

である. g(x)はグラフに書くと次のようになる:

f:id:End01nojo:20141215183336p:plain

 f(x)と同様に考えると,

 \int_{-\infty}^\infty |g(x)|^\alpha dx

は,縦 (k^{-1/p})^\alpha,横 1短冊の面積の和である.つまり

 {\displaystyle \int_{-\infty}^\infty |g(x)|^\alpha dx = \sum_{k=1}^\infty \left( k^{-\frac{1}{p}} \right)^\alpha = \sum_{k=1}^\infty \frac{1}{k^{\frac{\alpha}{p}}} }

となるので,収束の条件は \alpha/p > 1となる. p/p=1なので g(x) \notin L^pであり, q/p>1より g(x) \in L^qである.

なお,この反例は本で見たのではなく私が考案したものであるため,何かに使用する場合にはご自分で証明が合っているか今一度確かめられるようお願いする.